先日、日本時間の2017年7月15日~17日にかけて世界的な対戦ゲーム大会である "EVO 2017 (the Evolution Championship Series)" が開催されました。
予選プールを勝ち上がって決勝のTOP8へ進出したのは、
- トキド
- 板橋ザンギエフ
- もけ
- かずのこ
- MOV
- Punk
- NuckleDu
- Filipino Champ
~以上の8名。
実際の対戦模様は動画を観て貰えば分かるとして…いや~今回は正に、"This is TOKIDO!" でした!つかもうネタバレになりますが、優勝はトキドさん。トキドさん素晴らしい!
LOOSERsに落ちてからの這い上がり戦だったので、かなり厳しい戦いになったのですが。それを物ともせずに跳ね除け、特に最後のBEST4に入ってからの3連戦では正に豪鬼に相応しい、神懸かった鬼神の様な立ち回りと高火力コンボを存分に駆使して、一気に世界の頂点へと駆け上がりました。
細かい事を言えば、もけ.ラシードと板橋ザンギエフが潰し合って結果、豪鬼にとってはかなり与し易い板ザンの方が勝ち上がって来てくれたのもラッキーだったと言えるでしょう。しかしそれ以外でも、強豪中の強豪であるNuckle.ガイルとかずのこ.キャミィを堂々撃破しての決勝入りですから。棚ぼた的勝利であったとは言い難い、むしろ薄氷を踏む思いの戦いが最後まで続いていたと思います。
以前は通り名でもある「マーダーフェイス」に代表される様に緊張しいと言うか、相手に連チャンで反撃を喰らうと亀になってしまって、そこを付け込まれて投げハメの的になってズルズルと負けて行くパターンが多かったのですが。近年、特に戦場をスト5に移してからの1年余りは急激にメンタル面で成長したと言うか。以前のように失敗を引きずらなくなりました。
また5豪鬼の持ち味であるVトリガー発動後の高火力コンボをいまいち実戦内で使い熟せて無かったのが、ここ3ヶ月ほどで急速に戦術的に幅のある戦いを出来る様になり。特に{対空昇竜+トリガー発動}からの[Vトリ:斬空波動]を放っての表裏2択起き攻めが良く機能していた様に思います(最終決戦での対Punk戦ではカギになったと思います)。
さらに対かずのこ.キャミィ戦では使い所が難しい豪鬼のVトリガー技である[羅漢]を、画面端に追い込んだ時に意図的に相手が見てから反応し易い多段攻撃の[豪焦破(灼熱波動)]をガードさせる連携を行い、それをエサに相手の[ガードキャンセル攻撃]を誘って[羅漢]で刈り取り逆にカウンタで大ダメージを与える場面が複数回見られました。この様にシステム研究やキャラ対策よりも対戦相手の癖や心理を読み取り、それに呼応したプレイを行う様なプレイスタイルに改めて練習して来た成果がようやく実を結んだと言えるでしょう。
そして終にGRANDファイナル決勝の舞台。相手は今、最も強いと評されるPunk.かりん…!自分はずっと公言してる様にトキドさん推しな訳なんですが、それでも今回は配信を観ながら正直、Punk.かりんに対してときど.豪鬼では厳しいのではと思っていました。実際、それくらいにPunk.かりんは強いです。例えるなら全盛期のウメハラ並みと言っても過言では無いでしょう。
そして幕開けた最終戦、トキドさんは3ゲームのハンデを背負ったLOOSERs側にも関わらず1R目から積極的に攻め続けますが、最初のRはやはり貫禄と言うか余裕を見せつつの[CAフィニッシュ]でPunk.かりんに取られてしまいます。今までだったらこの時点で既に暗雲立ち込める展開となる訳ですが…今回のトキドさんはここからが違います。2R、3R共にもつれ込みますが、体力を削られても最後まで落ち着いてプレイ出来ていた様に感じられました。そして1ゲーム目は見事先取し、これで一息付けたと同時に波に乗る事が出来た様に思います。
一方のPunk選手の方は、Filipino.Champ選手が早々に敗退してしまったため、この決勝トーナメントで唯一の開催国USA勢となってしまい、そのため否が応でも会場の期待をその背に一身に背負う事となり、その重圧プレッシャーは相当なモノであったと想像します。そのためPunk選手は"悪童"と称される様に、本来は相手を喰った様な自由奔放なプレイスタイルが持ち味だったのが、この決勝の場ではかなり動きが固かった様に見受けられました。会場に応援に駆けつけてくれた家族の声援も、この時ばかりは逆にプレッシャーになってしまったかもしれません。
そしてPunk選手も2ゲーム目は取り返すのですが、ここでもメンタルを切り替える事が出来たのは追う側のトキドさんの方で。本来であれば王者として受けて立つ側であるPunk選手の方がむしろ浮き足立っている様な印象に見えました。互いにR取り合うシーソーゲーム展開になるかとも思いましたが、3ゲーム目をトキドさんが取った時点で全体の流れが大きく傾いた様に思います。無論、トキドさんも緊張していると思いますし、今まで1度もEVOで優勝した事は無いので、そういう意味ではPunk選手以上にプレッシャーがあったと思います。しかしトキドさんはそれを上手にコントロールし、プレッシャーや緊張を良い意味で自分の力に変えるメンタルコントロール技術を学んで来たと思います。今回はその成果が十二分に出ていたと思います。
しかしPunk選手の方はそうではありませんでした。2ゲーム目を取り返した時点で波に乗るどころか、返ってもうこれ以上は負けられないと言うプレッシャーを逆に自分で自分に与えてしまってた様に感じられました。やはり数千~数万人が見守る大会場の中で得も言われぬ押し潰される様な雰囲気の中、いつも通りのプレイをすると言うのはそれだけで非常に優れた技術や才能が必要となるのです。よく「経験の差が出た」と言いますが、過去の失敗経験を将来の成功へ繋げるためには、ただ経験を積むだけではダメで。経験し、さらにその上で分析し考えて学習しなければ、経験もただの思い出で終わってしまいます。
双方の勝ち星が一旦リセットされるLOOSERs側のトキドさんが3勝目を取った瞬間、ゲーム内容的には運が良かっただけなのですが、この瞬間にPunk選手の心が折れてしまったと言うか、何かが大きく崩れた瞬間でした。こういう場合、大会ルールでは特に勝ち星が負け越している側は使用キャラクターの変更や、或いは5分程度の休憩を取る権利があるのですが。Punk選手は間を開けずに試合続行を要求、恐らくは弱気になるなと自身に言い聞かせ鼓舞する目的も有ったと思いますが…これが完全に裏目に出て開始直後のリセット1ゲーム目の第1Rはまさかのパーフェクト負け!続いての2R目も体力リードしていたにも関わらず、{表裏2択起き攻め}をまともに食らって一気に逆転負けしてしまいました。
これで事実上、試合は決していた様に感じました。トキドさんはますます自信を持って今まで通りのプレイを貫けば結果はちゃんと着いて来ると確信したでしょう。逆にPunk選手は大きく動揺し今までの自分のプレイではダメなのでは無いか?と疑念が生じしてしまい、かと言って何か有効な対策を持っている訳でも無く、そのままズルズルと沼に沈み込んで行ってしまった様に思います。余談ですがこういう時のメンタルの切り替えと言うか、今までのスタイルを捨てて割り切った動きを出来るのがふ~どさんで、今回は振るいませんでしたが、彼が安定して大会上位成績を残している一因では無いかと思います。
マーダーフェイスからハッピーフェイスへ。トキドさんEVO2017優勝、おめでとうございます。
P.S.
優勝インタビューではいつもの "マーダーイングリッシュ" でこんな感じの事を受け答えしてます(笑)。
―― 優勝おめでとうございます。今のお気持ちは?
you guys know from my face I'm full so happy now!
皆さんご存知の通り、今の私の顔はとてもハッピーです!
―― 貴方は2013年のEVOで準優勝に甘んじてましたが、それから何か練習をしましたか?
at the time, I just go to training mode then I play my trainings, I but it doesn't work.
その時は、私はトレーニングモードで練習を積んだが上手くいかなかった。
I have to know opponent what thinking. I have to control opponent. this is a fighting game interesting thing. so, I practiced a lot on two opponents.
私は対戦相手の事を学ぶ必要があると分かった。対戦相手をコントロールする事、これは格闘ゲームの面白い部分です。そこで私は2人の対戦相手と多くの練習しました。
―― Punk選手は対戦相手を上手くコントロールしていたと思いますが、貴方はPunk選手をコントロール出来たと思いますか?
because I have a friend, he is very long time ago we meet together and practice a lot it main character is KARIN, he say met a Punk.
私には古い友人が居て、彼は随分前からカリンを使いこなしており、ずっと一緒に練習を積んで来ました。彼はパンクと会った事もあると言っています。
―― 秘密の練習相手ですか?
it's no secret, but I have MAGO!
それは秘密と言う訳では無いですが…私にはマゴが居ます!
P.P.S.
Punk選手は最後の表彰式の場では何やら憮然とした表情でしたが、自分の目には涙ぐんでる様に見えました。普段は相手を挑発したり、いつもニヤニヤして人を喰った様な男ですが…でもまだ20歳そこそこの若者です。まだ子供と言っても良いかもしれません。恐らく初めての大敗で悔しかったのでしょう。
でもまだこれからの選手です。逆にこの負けが彼を大きく成長させるかもしれません。今、この場に立つトキドさんがそうであった様に、2年後~3年後の彼の成長した姿が楽しみです。そしてその時には前にもまして日本人キラーとして恐れられる強敵に育っている事を願います。
後、実況解説のJames.Chen氏が最後、貰い泣きして言葉に詰まってますが…これは格ゲーあるあると言うか、知ってる人は知ってるトリビアで。実は氏は長い事ずっとトキドさんのファンを公言しており、さらにこのEVOを始め、有名所の国際大会ではメインの実況解説を担当する事が多いので、ある意味トキドさんと苦楽を共にして来たと言っても過言では無かったのでしょう。ずっと10年近く見守って来て、終にようやくの初優勝を飾った晴れの舞台の実況解説を自分が担当出来たのですから、感慨も一入だったと思います。
改めてトキドさんのEVO2017、SF5部門優勝おめでとうございます!