2019年春アニメ最終批評.その2

最終回では無いですが、とりあえず前半の一区切りが付いた作品について自分的に思った事などを…

前半アニメ批評: Fairy gone フェアリーゴーン

色々とやりたい事は何となく分りはするんですが、如何せん尺が足りてない上にキャラが多過ぎて焦点が分散してしまい、その結果、通しで見ても何が何だかサッパリ分からないみたいな感じになってしまいました。多人数による群像劇ドラマとして仕上げたかったのか、それとも主人公(ヒロイン)の成長物語を描きたかったのか、全体を通して見ても非常に焦点がボヤけており物語としても散漫な印象を抱かせる原因となっていると思います。

そして何と言ってもタイトルにもなっている「精霊」の扱い方と描き方が余りにも良くないと思います。最初の第1話の初登場の時点でこそ目を引きましたが、回を追う毎にただのRPG的な戦闘オプションとしての描写しか引き出せず、本来の描くべきであろう「人と人為らざる存在との関係」が全く描けて無かったと思います。また劇中では精霊使いは一騎当千の強者として扱われますが、実際の描写ではそこまでの迫力も感じられず…正直、この程度の戦闘力ならば普通にサブマシンガンの一斉掃射の方が現実的かつ戦術的にも圧倒的に強いのでは?と思わせる描写が度々ありました(実際、ライフル銃での狙撃でダメージを受けていましたし)。

これだったら精霊自体を最初から登場させずに、世界大戦で荒廃した国を立て直して行く中での若者たちの青春群像劇として描き切った方が何十倍もマシだった様に思えます。或いは異世界的な風味が欲しいだけであるのなら、精霊を戦術兵器としてでは無くもっと精神的な存在として限定して描くべきだったかなと思います。現実世界に置ける、アフリカ内戦で絶滅の危機に瀕している野生動物みたいな感じで。基本的には登場人物たちは困難を自力で乗り越えるしか無いが、時に精霊は気まぐれか或いは運命に導かれてか不思議な力でヒロイン達を助ける事もあれば、逆に道を惑わす事もある不確かな存在として描くべきだったかなと思います。

また戦争モノで部隊内の誰かが戦死するのはお約束なので致し方ないですが。お約束だからこそ、主人公とはほとんど何の絡みも無く視聴者側も全く意識していない名無しのモブ同然のキャラクターが突然に死んでも、それは日常の新聞報道で遠く離れた場所の殺人事件や事故のニュースを見聞きするのと同じで、何の感慨も非痛感も生まれませんし下手すれば逆に大げさに悲しむ登場人物たちに不快感すら抱かせます。もしも作品内で誰かを死なせる必要があるのでしたら、それは最も重要で物語に欠かせない人物であるべきなのです。死んで居なくなっても物語の進行に影響無いキャラクターを死なせても、視聴者読者は何も感じません。

何だからよく分からないままに第2期へと続くみたいですが…次期はちょっと見なくてもいいかなと思いました(まあそれでも見るんですが…)。

前半アニメ批評: キャロル&チューズデイ

これも出だしは好調だったのですが、回を追う毎に段々と失速して行った感じがします。

そもそも大前提となっていて毎回、冒頭のナレーションでも繰り返し唱えられている「火星が舞台」という設定が全く生かされておらず、また登場人物の価値観や境遇等も取り立てて既存のモノとの差異は感じられないので、これだったら奇をてらって「火星が舞台」などとする必要も無く、普通に近未来SF的な地球が舞台で良かったのではと思います。

親が政治家で世間体ばかりを気にするとか、孤児で両親の顔も知らず苦労した~等のキャラ設定はある意味、テンプレ的で特に火星的なモノではありませんし、その脇を固める仲間や登場人物達も特に既成概念から乖離した様な独自のキャラクターは一人も居なかった様に思います。強いて言えば「全ての楽曲はAIによる自動作曲がメイン」というものですが、これも単なる現実世界の10年後の未来予想に過ぎず、特に地球外での環境である必要はありません。

例えば…

火星では地球と違って大気が薄く気圧が低い状態が普通であり、また大気を構成する成分も地球とは異なるため(窒素率が多く二酸化炭素が少なめとか)、そのため音の伝わり方が一般的な地球上と異なってくる。それ故、単純に地球でヒットした楽曲をそのまま火星で聞いてもヘリウムガスを吸った様に変に聞こえるため、そのため火星では火星独自の音楽や歌い方が発展しそれらをサポートするためにAIによる自動作曲が広く普及しているのだった…

~みたいな設定ならば、またひと味もふた味も違った展開や切り込み方が出来たと思うのですが…残念ながら作中で火星である設定が有効に生かされた部分は皆無であり、それどころか冒頭ナレーションと会話中の単語としての意味以外では全く使われていないのが残念でなりません。

今後の後半の展開も「私達はお金や有名になりたかったんじゃ無い!」的なただのテンプレ的な方向性のみに始終する様では自分内での作品評価は上がる事は無いと思います。余り望み薄ですが、後半の巻き返しに期待して見続けたいと思います。