現地時間の去る7月15日~17日の間にアメリカはネバダ州ラスベガスで、"The Evolution Championship Series 2016" が開催されました。
何とTOP8集団の8人中6名が日本人と言う、来年のEVOジャパン開催前にプチEVO日本大会状態に!しかし相変わらずインフィル:ナッシュの切れ味が鋭い!SF5ではナッシュはもう落ちた~との下馬評が多かったにも関わらず、フタを開けてみれば3人もナッシュが勝ち進んでのナッシュ祭り。プロならば年内までしか持たないとか負け惜しみ言う前に、これら鉄壁のナッシュ勢を撃破してから強がって欲しいものですが…結果は残酷なまでに正直です。やはりリュウではナッシュに勝てない!
その中でもまあまあの対応を見せていたのが、ふ~ど:ミカを始めとしたミカ勢だったのですが。逆に言えばナッシュ側からすればそこに絞って対策を練る事が出来るので、キャラ毎に対応を考えないといけない分、ミカ側が不利だったかもです。決勝もまさかのRZR同門対決で「インフィル:ナッシュvsふ~ど:ミカ」と言う年初から見飽きた組み合わせ(笑)。ん~、せめてナッシュ側が新参の床ドンさんか唯一のUSA生き残り勢のL.I.JOEさんだったらまだしも…。
…とdisりばかりだと本当に「SFVはオワコン」などと言う妄言を信じる人が出そうですが(笑)。試合内容は世界最候補の名に恥じぬ名勝負揃い!TOP8の決勝トーナメントは、その全てがベストバウトだったと言っても過言無しの最高のゲームマッチとなりました。読みを外されてもひたすら攻め続けられる強気の姿勢と、ワンチャン通った時に最大火力を叩き込めるコンボ精度、そしてそれらをもつれ合った試合の最後まで継続出来るメンタルの太さ強さが勝敗を分けた感じです。
特に今大会の新参ナッシュ勢の2人は、乗って来て自分が攻めてる時は良いんですが。一転、ラウンドを先行されたり体力リードを許してからの自分側が追い込まれた時の凌ぎが良くなかった様に見えました。特に今まで国内大会ですらほとんど経験の無い床ドンさんは、やはり当然と言えば当然ですが、この世界規模のラスベガスの雰囲気に完全に飲まれてしまっており、動きが非常に固くなっていた印象です。2戦目以降は多少ほぐれて来た感はありましたが…他の古参プレイヤとの経験値の差が出てしまった感じです。
自分、以前からふ~どさんのプレイはいまいち華が無いと言うか、余り好きでは無かったのですが…(笑)。このSFVに関して言えばかなり健闘していると言うか、ようやく最低限の金を取れるだけの試合が出来る様になったかなと(笑)。特に敗れはしましたが、最後の決勝試合は大いに会場を沸かせ、TOPプロと呼ぶに相応しいパフォーマンスでした。
自分的には一押しのトキドさんがTOP8に残れず敢え無く陥落していったのが残念でしたが…その変わりにもう1人の推しメンであるネモさんが、プロ契約初年度&EVO初出場でいきなりTOP8入りを果たすと言う快挙を見せてくれたので、まあ満足です。可能性は薄いでしょうが、万々が一にでもロレントが新キャラ追加されたならば、来年度以降も再び台風の目になってくれるかもです…?
今回、自分的に注目したのはトキドさんのプレイスタイルに明確な変化が現れていたと感じた事です。その片鱗は既に前回のCEO2016の時点で現れ始めていたのですが、今回はさらに顕著になった感じです。つまり "プロとして勝つだけでは無く、勝ち方戦い方にこだわるプレイスタイル" に明らかにシフトして来たと感じました。
具体的にはリュウのVスキルである[心眼(ブロッキング)]の積極的な導入です。見た感じまだまだ直敵的に勝敗に貢献するレベルには達してない感じも有りましたが…しかし逆にリスクが低いと思われる場面では、敢えて通常ガードせずに立ち振舞を[心眼]に切り替えて対処するプレイを強く意識している様に感じました。
上記動画を見る限りでは、かなり亀になり余り手を出さないウメさんに対し(いわゆる"安定行動"を重視して低リスク低リターンの勝率重視のスタイル)。トキドさんは常に積極的プレイを心掛け、[心眼]を出来るだけプレイ内に導入して行こうと言う姿勢が感じられる戦い方だと思います。これは単純な目先の勝敗よりも、長い目で見てより多くの観客に愛されるプレイスタイルを模索している様に思いました。
これはSFVの根本的なゲームコンセプトと強くリンクする問題で。やってる人なら既知ですが、いわゆる「7fpsラグ問題」と言うヤツです。CAPCOM側は既にこれはバグでは無く仕様であり、今後とも修正する意思も必要も無いとコメントしてますので、これは開発側からプレイヤに対する明確な意志の表れであると解釈すべきです。つまりCAPCOM側は俗にいう超反応無敵技で相手のジャンプ攻撃などを迎撃するスタイルを絶対に許さないと言っているのです。見てから安定行動をするのでは無く、常に相手の行動の先々を読んで一定のリスクを負う事とバーターでの大きなリターンを得るゲームにすると言う事です。
これはSFVの基本的なシステム設計は基より、各キャラクターの技性能などにも色濃く反映されていて。多少のバラ付き(或いは調整失敗?)は有るものの、全体としては防御行動が非常に弱い反面、一旦読みが当たり択が通った時には非常に大きなリターン(大ダメージ)を得る事が出来る様になっている事に気付かされます。つまり "ガン攻め" が異常に有利な様にデザインされたゲーム、それがこのSFVなのだと言う事に。
以上の事を踏まえて改めてリュウと言うキャラを見ると、このリュウにだけ実装された[心眼]と言う技の意味が自ずと見えて来るかと思います。そしてトキドさんはこのメッセージを確かに受け取り、不慣れながらも攻撃的リュウのスタイルを模索しながらのプレイであり、その答えの1つが[心眼]の積極的使用にあったと推測出来るのです。
上記動画でもウメハラさんのプレイは典型的な、コンボ精度に自信を置く余り相手のミス待ちに徹して時間切れになり逆に焦って自分の方からミスをする~的な雑魚プレイヤに成り果てています。これでは攻撃に重点置くSFVでの安定した勝ちは望めません。仕上がってるとか、もう少し完成に時間が掛かるとかの次元の話では無く、既に答えは結果として出てしまっているのです。与えられた時間も環境も皆同じ。それでも言い訳すると言うのであれば、それはもうプロゲーマーとしては引退し楽しく我流プレイを貫くアマチュアに落ちる事を意味します…!
ウメさんは自己の主催する "DAIGO the BeasTV" の配信番組内で「人読みはしたくない」旨の発言をしていまして…でもそうなって来ると、機械的なキャラ対策のみを突き詰めて自分の理想としたいと言うのであれば、もうそれは対人戦では無くむしろ対COM戦に近いのでは?と言う気がしなくもありません。
無論、自分としては対COM戦のみを突き詰めたスコアプレイ大好きTAS大好き人間ですので、ウメさんほどの技量を持ったプレイヤが "こっちの世界(笑)" へ転んでくれるのであればウェルカムですが。恐らくそう言う話では無いでしょうし、だとすれば今後も月日を重ねるほどにウメハラ流は世間の主流とは大きく乖離して行く事は疑い様が無いです。
またさらに今回のEVO2016大会で特筆すべき点は、恐らくは "世界初のゲーム開発側が大会運営側と連携協力して実際にゲーム内で稼働するコンテンツを作った" と言う事実です。
実際にSFVをやってる人ならば、今回のTOP8の決勝トナメ動画を見ればすぐに気付くかと思いますが。対戦ステージが今回の "EVO2016:ラスベガス会場専用ステージ" になっている事が分かりますでしょうか?前述までの予選プールまでは選択可能ステージにこの特別ステージ自体が現れていませんので、今回はCAPCOM側がわざわざ大会決勝のその日に合わせて特別ステージのデータを作って独占配信した事が分かります。
今回は大会合わせのDLCの一種と言う形を取っていますが(開発諸経費を回収するための当然の処置)…しかし本来、資本提携も何もしていない全くの部外者である大会イベント運営会社の冠である "EVO" の名前をステージ内背景の電飾表示部分に流しているのは紛れも無い事実です。EVOを主催するShoRyuKen.comとCAPCOM側のどちらから接近を図ったのかは分かりませんが、今までゲーム会社とイベント運営会社はそれぞれ勝手に互いに関知せずというスタイルが主流だった時代から、明確に互いにアイデアを持ち合い協力して1つのコンテンツとブランドを盛り上げて行こうと言う流れに舵を切ったのだと思います。
こういう他業種と連携やコラボを行いながら特別コンテンツの独占配信などを行う手法は、古くはポケモンのミュウツーのイベントのみのデータ配布など、家庭用ゲームコンテンツではかなり昔から行われて来ました。むしろ格闘ゲームでこの様な有名大会とコラボを全くして来なかった事の方が異常だったとも言えます。しかし最初の一歩を踏み出してしまえば、後は堰を切ったように一気に流れ出すでしょう。
英国がEU離脱を表明し、人間プロ棋士がAIに完敗し、ゆとり時代の代名詞だった平成が強制終了する可能性が論じ始められた、この2016年と言う正に旧時代と新時代の節目となる年に、昭和の旧世代を代表するレジェンドの脱落が決定し、新時代を代表するゲーム理論とそれを体現しようとする新しい世代の台頭の始まりを見るのは。昭和から3つの時代を生きて見て来たロートルゲーマー最後の生き残り世代としては、何とも感慨深いものがあります…!
P.S.
冷血さんのバルコスは元より、手元操作を隠すための "スパリガード紙袋" に受ける(笑)。つかバルって何か操作で次の行動を悟られる様な技とか有るんでしょうか。瞬獄コマンドみたいなのは無かったと思いますが…??
また世界大会に相応しく、何とあのUMRさんが密かに出場していました(笑)。素顔のままで出場していますが、個人情報は大丈夫だったんでしょうか…(笑)?でも髪色から察するに、変名でシルフィンさんが代理出場していたのかも?
P.P.S.
LI.JOE(ロングアイランド.ジョー)さんが会場を異様に沸かせているのは単にTOP8中の唯一のUSA生き残り勢と言うだけで無く、実は彼には過去からの因縁深いドラマが有り…!
元々はゲーム好きの父の影響でゲーム好きになり、やがて大会などにも出場する強豪ゲーマーに~と言うありがちな展開。順調に成長し内外でも名を知られるゲーマーとなった彼は、やがて日本でのゲームイベント "闘劇:スーパーバトルオペラ(SBO)" に出場が決定します。ところが奇しくも折り悪くその時期に彼の母親はガンを患い入院闘病生活を送っていたのです…!彼は今日明日をも知れぬ母を置いて海の向こうへ行く事を躊躇います。
しかし彼の両親は息子の晴れ舞台を自分たちの都合で諦める必要無いと説得。病床の母は「私の事は心配せず行きなさい」と背中を押し、父も「お前が日本から帰って来るまで、ママには俺が付いているから大丈夫だ」と励まし後押しをしてあげた結果、彼は日本行きを決断しアメリカ西海岸地域代表として闘って来ました。両親の言葉通り、彼の母は彼が日本から帰るまで健勝を保ち、息子の帰国の3日後に他界します。2008年の事でした。
それから時は流れ今回のEVO2016、世界一を競い合う地上最高の晴れ舞台に今度は予選リーグの一角などでは無く優勝候補の1人として、そして壇上唯一のアメリカ人として立っているのです。否が応にも盛り上がざるを得ません!
無論、勝負の世界は厳しく、どんな事情が有るにせよ敗者は黙って去り、勝者のみが全てを掴む非情な世界です。ですが…時としてこの様な事が起きるのもまた勝負の世界。イイハナシダナー゚(゚´Д`゚)゚。